交通事故においての自賠責保険の理解資料
■自動車損害賠償責任保険(自賠責・任意)
(自動車損害賠償責任保険とは?)
自賠責損害賠償責任保険とは自動車、バイク(原動機付自転車も含む)を運転する際に、必ず加入するように、法律で決められた保険です。保険に入っていない加害者が交通事故を起こして、他人にケガをさせたり、死亡させたりしてしまった場合、多額の賠償金を払えない場合があります。その場合、死亡したりケガをしてしまった被害者は、治療費などの賠償金を払ってもらえず、治療代などは自分で払って、泣き寝入りをすることになってしまいます。
そこで、交通事故にあった被害者が泣き寝入りをすることなく、最低限の保障を受けられるように、車やバイクを運転する人は全員自賠責保険に入るよう国が定めたことで自賠責保険が制定されました。自賠責損害賠償責任保険は、被害者の救済を目的とした社会保障の役割を担っているのです。自動車損害賠償責任保険には、「自賠責保険」と「任意保険」の2種類の保険があります。
まず、「自賠責保険」というのは別名強制保険とも呼ばれています。全ての自動車(車、バイク)と原動機付自転車を運転する場合は、絶対に加入しておかなければならない保険です。
反対に任意保険は、加入する・加入しないは各人それぞれが自由に決められる保険です。
(自賠責保険の補償範囲、適用範囲)
自賠責保険が補償される範囲は「自動車の運行によって、他人を死亡させたり、怪我をさせてしまった場合」になります。ここで言う自動車の「運行」は、ドアの開け閉めなど、自動車を走らせていない事故も含まれます。自賠責保険で補償されるのは、交通事故で他人にケガをさせてしまったり、死亡させてしまった場合の人身事故だけで、”他人”に対する補償(対人賠償)に限られています。自賠責保険での”他人”という意味合いは、運転者とその自動車の持ち主(所有者)以外の人のことを指します。つまり、保障されるのは他人を死亡させてしまった場合の賠償金や、ケガの治療代など、他人に対する保障だけであって、運転者とその自動車の持ち主のケガや自動車の修理代、ガードレール、中央分離帯などの物に対する修理代は補償されません。
対人事故を起こした場合に自賠責保険で補償される内容には、下記のようなものがあります。
死亡した場合 | 治療費、雑費、葬儀費、死亡する間に被った損害費、慰謝料など。 |
ケガをした場合 | 治療費、雑費、休業による損害、慰謝料など。 |
後遺障害の場合 | 後遺障害の逸失利益、負傷と後遺障害の慰謝料、後遺障害の確定までにかかった損害など。 |
■任意保険
(任意保険の特徴と補償範囲、適用範囲)
任意保険は、自賠責保険では補償されない部分を補う保険になります。
例をあげると自分のケガや自賠責保険の補償額を超える金額の補償、自分や相手の車の修理代、破損させた公共物などの修理代が適用範囲になります。任意保険は大きく分けると、「対人賠償保険」「対物賠償保険」「搭乗者傷害保険」「自損事故保険」「無保険者傷害保険」「人身傷害補償保険」「車両保険」の7つに分類されます。
この7種類の保険の中で加入しておくべき任意保険は、「対人賠償保険」、「対物賠償保険」、「人身傷害保険」、「搭乗者傷害保険」、「車両保険」の5つになります。
任意保険の一覧表
賠償責任保険 | ・対人賠償保険 |
傷害保険 | ・搭乗者傷害保険 |
車両保険 | ・車両保険 |
1.対人賠償保険
他人にケガをさせてしまったり、死亡させてしまった場合を対象とした保険。
2.対物賠償保険
他人の車や電柱、ガードレールなど、物を破損させてしまった場合を対象とする保険。
3.搭乗者傷害保険
運転手を含む、すべての同乗者を対象とした、ケガや死亡した場合に支払われる保険。
4.自損事故保険
他の誰も巻き込まずに、自分だけで起こした単独事故の場合に適用される保険。
5.無保険者傷害保険
相手が対人賠償保険に加入していない場合や、加入していても保険金が少なく、賠償金を支払う能力が無い場合に適用される保険。
6.人身傷害補償保険
ケガをした場合の治療費等を、自身の過失部分も含めて全額負担してもらえる保険。
7.車両保険
自分の車が破損した場合を対象とした保険。
■任意保険の対人賠償責任保険
(対人賠償責任保険とは?)
対人賠償保険は、交通事故で相手に怪我をさせたり、死亡させてしまった場合等に、自賠責保険の補償額を超えてしまう分が支払われる保険です。
(対人賠償責任保険の補償範囲)
対人賠償保険で補償されるのは、あくまでも「他人」を怪我させたり、死亡させてしまった場合に限られます。対人賠償保険でいう「他人」というのは、「被保険者(保険の対象となる人)」以外の人のことで、自分以外の人という意味ではありません。
具体的に被保険者には下記のような人が当てはまります。
【対人賠償保険の被保険者】
・記名被保険者(保険を申し込んだ契約者)
・記名被保険者の配偶者
・記名被保険者の配偶者の同居の親族
・記名被保険者、またはその配偶者の別居の未婚の子
・許諾被保険者(記名被保険者の承諾を得て車を使用または管理中の者)
・記名被保険者の使用者(雇い主)
■任意保険の対物賠償責任保険
(対物賠償責任保険とは?)
対物賠償保険は交通事故で「他人の財物」に損害を与えてしまった場合に補償される保険です。
たとえば、「止まっている車に追突してしまい、修理代を請求された。」
「スーパーに車ごと突っ込んでしまい、店の修理代の他、壊してしまった商品代や休業補償など、合わせて数百万円を請求された。」
「わき見運転をしていたら中央分離帯に突っ込んでしまい、高額な金額を請求された」
など、対物賠償保険では相手の車の修理代や、ガードレールや標識、店舗や商品などの「物」の保障をしてくれる保険です。
また、物以外にも物が損害を受けたことによる間接的な損害も補償の対象になっております。
たとえばコンビニに車が突っ込んだために修理が終わるまで営業できないことによる営業損失や、タクシーやバスと事故を起こした場合、修理が終わるまでの休業損失なども補償されます。
(対物賠償責任保険の範囲)
対物賠償保険で補償される範囲は、対人賠償保険と同じで
「他人」の財物に限られています。対物賠償保険で言う「他人」というのは、対人賠償保険と同じで、「被保険者(保険の対象となる人)」以外の人を対象にしています。
【下記の者が使用・所有・管理している財物は補償の対象外】
・記名被保険者(保険を申し込んだ契約者)
・記名被保険者の配偶者・父母・子供
・被保険自動車を運転中の人と、その配偶者・父母・子供
・記名被保険者の使用者(雇い主)
上記に当てはまる人が使用・所有・管理している財物は補償の対象外です。
■任意保険の搭乗者傷害保険
(搭乗者傷害保険とは?)
搭乗者傷害保険とは、保険に加入している車に乗っている「搭乗者」が、交通事故でケガをしてしまったり、死亡してしまった場合に過失に関係なく補償される保険です。
「搭乗者」には運転している運転手はもちろん、助手席や後部座席にも乗っている人たちを含めた、自動車に乗っている人全員が含まれております。
この搭乗者障害保険は自分に過失がない事故でも、搭乗者がケガをしたり死亡したりすれば補償の対象になる上、保険を請求しても等級が下がりません。
つまり、こちらが100%過失であっても保険金が支払われます。
また、搭乗者傷害保険は、加害者からの損害賠償金、自賠責保険、各種傷害保険などとは関係なく支払われます。相手の保険でこちらの治療費などがまかなえる場合、自分の加入している保険は使わないという人もいますが、搭乗者障害保険は乗車中にケガをしたら積極的に請求すると示談金を高めることがあります。
(搭乗者傷害保険の補償範囲)
搭乗者傷害保険が対象となるのは、「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」で、違法な乗り方をしていた場合には保険金は支払われません。
たとえば、暴走族のような違法走行中に事故を起こしてケガをした場合や、車から身を乗り出して乗っていたらケガをした、等の違法乗車をしていた場合は、搭乗者傷害保険は支払われません。
また、搭乗者傷害保険は飲酒運転をしていた場合も支払われません。
■任意保険の人身傷害保険
(人身傷害補償保険とは?)
人身障害補償保険は、契約している車に乗っている搭乗者(運転者も含める)が、交通事故でケガや後遺障害を負ったり死亡したりする場合に、契約の保険金額の範囲内で実際の損害額が支払われる「実損払い」の保険です。人身傷害補償保険では自分自身の過失分も含めて、入院・通院した治療日数に関わらず、契約した保険金額の範囲内で、実際にかかった治療費用や休業補償、慰謝料などを、全額補償してもらえます。また、人身傷害補償保険は契約車両に乗っている時だけでなく、被保険者とその家族は、契約車両以外の車(友人の車等)に乗っているときの事故や、歩行中の自動車事故により死傷した場合等も補償の対象になります。
(人身傷害保険の特徴・メリット)
人身傷害補償保険の特徴・メリットをまとめると、下記のようなものになります。
●実際にかかった損害額を補償(実損払い)してもらえます。
人身傷害補償保険は、自分自身の過失分を含めて、実際にかかった損害(入院・通院費等の治療費、休業補償、慰謝料など)を補償してもらえます。
- 単独事故も補償
不注意でガードレールにぶつかったなどの相手のいない単独事故(自動車事故も)の損害も補償されます。
●歩行中など、車に乗っていないときの事故も補償。
契約者本人とその家族であれば、歩行中や自転車に乗っているときの自動車事故も補償されます。
■任意保険の自損事故保険
(自損事故傷害保険とは?)
自損事故保険は、自分の過失が100%もしくは相手がいない事故を起こし、ケガや傷害を負ったり、死亡した場合に補償される保険です。たとえば、「信号待ちの車に追突した」、「不注意で中央分離帯にぶつかった」、「センターラインをオーバーして対向車と正面衝突した」、といったケースがあげられます。
こういった事故の場合、同乗者は自賠責保険金が支払われます(同乗者が車の持ち主でない場合)ただ、運転手のケガや死亡に関しては、自賠責保険を適用することができません。
そのような場合に、最低限度の補償をしてくれるのが、自損事故保険です。
この自損事故保険は、ほとんどの場合「対人賠償保険」を契約すると自動的にセットされてくるので、特にこの保険だけを新たに加入するという必要はありません。
(自損事故傷害保険の補償範囲・補償金額)
自損事故傷害保険の補償内容は、死亡時に1500万円、後遺傷害の場合50万円〜1500万円(介護が必要ない場合は350万円が上限)、事故によるケガで入院した場合は1日あたり6000円、通院では1日あたり4000円(ともに100万円を限度)となっています。自損事故保険の保険金は、搭乗者傷害保険とは別に支払われます。
自損事故傷害保険は、この保険の存在自体を知らない人も結構いるようですが、自損事故でケガをした場合でもあきらめずに、保険会社に相談をしてみるこが大切です。
■任意保険の無保険車傷害保険
(無保険車傷害保険とは?)
無保険車傷害保険というのは、交通事故を起こして後遺傷害を負ったり死亡してしまった場合で、相手が「無保険車」で賠償金の支払能力が無い場合に、自分が契約している対人賠償保険と同じ額の範囲内(無制限の場合は2億円が限度)で、相手が負担するべき損害賠償の不足分を補償してもらえる保険です。(後遺障害や死亡をした場合のみしか適用することはできません)。
(無保険車とはどのような車のことをいうの?)
無保険車は、下記のような条件に当てはまる車のことを言います。
・事故を起こした相手が、任意の対人賠償保険に加入していない場合。
・対人賠償保険に加入しているが、運転者年齢条件などの規定に沿っていないため、
保険支払われない場合。
・ひき逃げ・当て逃げなどにより、事故の加害者が特定できない場合。
・対人賠償保険に加入しているが、その保険額が被害者に支払う賠償額に満たない場合。
無保険車障害保険では、上記4つの条件のいずれかに当てはまる「無保険車」と事故を起こした場合に、相手が支払うべき賠償金の不足分を受け取ることができます。
(無保険車傷害保険の適用・補償範囲)
無保険車傷害保険は、後遺障害や死亡した場合にのみ適用される保険になりますので、完治するケガの場合には適用されません。